この園城寺は通称三井寺。こちらの名前の方が一般的かもしれません。
なぜ園城寺が三井寺と呼ばれるようになったのか?それは、大化の改新や壬申の乱で有名な天智・天武・持統の三天皇が産湯に用いられという湧水(三井の霊泉)がここにあり、「御井の寺」と呼ばれていたことに由来します。その後、智証大師が、密教の三部潅頂の儀に霊泉を用いたことから三井寺と呼ばれるようになりました。私が訪問した時期が、2014年11月。宗祖智証大師の生誕1200年ということで、慶讃大法会が行われていました。これは、さまざまな記念行事を通じて、大師の偉大な生涯を振り返り、菩薩行のお心を一人でお多くの人にお伝えするという目的で、2014年10月18日〜11月24日までの約1ヶ月、開催されていました。
お寺に足を運ぶうえで、こういうイベントや行事に合わせて行ってみると、いつもなら入ることができない庭園や建物、観ることができない秘仏を特別に公開してくれることがあります。また、その時だからこそできる体験やイベントなどに遭遇することもあります。寺社仏閣に訪れる際には、そういった点も気にしてみて頂けるとまた違った楽しみがあるかもしれません。
さて、ここ三井寺でも、特別なイベントが行われていました。
まずは、大法会といえば?
秘仏ご開帳。めったに公開されることがない、秘仏が公開されます。まず、一番最初は33年振りの公開となる、観音堂のご本尊「如意輪観音さま」。神々しく輝く金色のお体は柔らかく、やさしく優美な表情で頬杖をつくお姿は女性らしい柔和な雰囲気。まさしく「菩薩」。秘仏の貫禄を感じます。お会いできてよかった。ありがたい。そう思います。次は、わたしがもっとも楽しみにしていたイベント。「日曜美術館」の司会、京都国立博物館文化大使としても活躍されている、俳優・モデルの井浦新さんの写真展「三井寺讃仰」。わたしの中で、REVOLVERのクリエイティブディレクター兼モデル、俳優のイメージが強いARATAさん。果たして、どんな仏像の写真を撮影されるのかが、とっても気になったことがここに来た一番の理由でした。
人気俳優さんの写真展にもかかわらず、来客は数名、しかも無料展示。このゆるさとのどかな琵琶湖の景色が見事にマッチしていて、すごくいい感じ。さっそく、中へ入ってみると…。
すごい!
望遠で撮影された山伏や法要を行う僧侶の姿。それは、線香の煙、着物の文様、床を踏みしめる僧侶の足。さすが、フォーカスする視点が斬新。音や香りが感じ取れるような写真にすごく惹き込まれました。そして、注目の仏像写真…。
すごい!
わたしが今まで見てきた仏像写真は、たいてい全身がくまなく映っている、いわば証明写真。でも、新さんが取る写真は違います。きっとカレがその仏像のなかに、一番魅力を感じた部分を撮影しています。例えば、不動明王様の力強く、キュートな目。円空仏の陰影。鮮やかな写真たちは、その写真毎に展示の仕方が異なり、襖全面にドンと貼り出されていたり、丸窓障子に透ける素材で、川の水流の雫が展示されていたり…。こういう展示だったら、若いヒトもお寺の魅力に興味をもつのではないか?と、新さんの表現のすばらしさにただただ感嘆するばかりでした。
さて、あまりの感動と新たな表現方法を真似すべく、シャッターをパチパチときりながら、移動をするわたし。
この三井寺。天台宗の総本山ともあって、本当に広い。次に向かうは、18年ぶりに公開となる秘仏中の秘仏「黄不動」さまのご開帳。日本三大不動(京都・青蓮院の青不動、高野山・金剛峰寺の赤不動、園城寺の黄不動)で、とっても貴重な秘仏の黄不動さま。
色あざやかな彩色がキレイに残っていて、こちらも見事な金色。不動明王というと、険しく恐いイメージが強いのですが、こちらのお不動さまは、眉間にしわを寄せてはいるものの、とても優しい雰囲気。目が寄っていて、まんまるだからなのでしょうか?ちょっと可愛らしくも思えます。また何と言っても素晴らしいのが、お召し物の文様。ひとつひとつの線や色づかいがとても繊細で非常に美しい。対比色である朱と緑のコントラストとお不動さまの黄色。存在感がハンパないです。そして、注目したいのが、足の親指。すこしだけ指が上向きで浮いています。今にも動き出しそう…。仏師の想いとこのお不動さまに込められた魂が感じられます。
この三カ所でも十分お腹いっぱいになった三井寺。
更に先に進むと、るろうに剣心のロケ地にもなった坂や弁慶の釣り鐘など、まだまだ観るところはたくさん。
本堂にも素晴らしい仏像がたくさん並んでいました。ちょっとブログもお腹いっぱいな感じなので、次回に訪問した際に詳しくご説明をしたいと思います。