六波羅蜜寺。

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わたしの大好きなお寺。
正確には、わたしの“BEST OF 仏像”がここにあります。

そう、鎌倉文化史で、必ず教科書や資料集でも出てくる「空也上人立像」。
写真の右端にも映っていますが、口から念仏とともに、6人の阿弥陀仏を出しているあの有名な仏像です。

「市の聖(ひじり)」として、庶民に親しまれた空也上人。
第60代醍醐天皇の皇子として生まれるも、苦修練行を重ね、尾張国分寺にて出家。
森羅万象に生命を感じ、諸国を廻りながら、橋・道路などの建築による社会事業を行ったと言われています。
「阿弥陀念仏」を称え、念仏を唱え続け、多くの帰依者を得たことから、このような仏像がつくられたようです。



宝物殿に安置されているこの仏像。
撮影は禁止なので、ここから仏像をご確認ください。→ 空也上人立像

写真で見ると、若干不気味で少し怖い印象すら感じますが、
実際にお会いすると、空也上人のお人柄がにじみ出るような、実にお優しい表情。

さまざまな角度からじっくり見ていると、、突然、空也上人に生命が宿ります。

ちょうど、お賽銭箱が置かれている台の左側のスペース。
ここから、空也上人のお顔を見てください。

すると、目にキラッと光が差し込み、今にも動き出しそうな、躍動感。
これは平安時代後期から取り入れられた「玉眼」という手法で、
木造の仏像の眼球部分をくり抜き、水晶を施すことで、より写実的な効果が生まれます。

わたしに向かって、一瞬「にこっ」と微笑んでくれたような気がします。

この空也上人。
さすが、鎌倉文化の彫刻とあって、表情だけでなく衣装や身体つきも、実に写実的です。
印象的なのが、鹿角の杖と皮衣。

これには、こんなエピソードがあります、
上人が鞍馬山に閑居後、心の友として愛した鹿を、ある猟師が射殺をしてしまいます。
大変悲しんだ上人は、その鹿の皮と角を請い受け、生涯我が身から話さなかったと言われています。
この猟師も自らの殺生を悔いて、上人の弟子となり、瓢をたたき、法曲を唱し、衆生の能化につとめたと言います。

なんだか、人間らしくて、ほっこりするこのお話。わたしは大好きです。


六波羅蜜寺は、東山五条の住宅地のなかに、ひっそり佇む小さいお寺ですが、実は、重要文化財の宝庫。

鎌倉時代から江戸時代まで、約600年も続く“武士”の世を拓いた英雄、平清盛。
平清盛といえば、どんなお顔を想像するでしょうか?

たぶん、この仏像を思い描くことでしょう。→ 平清盛坐像

120を超える平氏一門の邸宅があったと言われるこの六波羅。
NHKの大河ドラマでも、なんども耳にした「六波羅」の文字。
武士の台頭は、ここからはじまったと言っても過言ではない、とても重要な土地です。

平清盛のゆかりの地としても名高い「六波羅蜜寺」。
仏像だけでなく、清盛の首塚も安置されています。


御堂の横にひっそりとある首塚。
一応、あたらしい屋根つきのおうちに守られているものの、あれだけド派手に世の中をきり拓いた清盛の首塚が、境内にちょこんと安置されているのも、なんだか歴史の変遷を物語っているようで、実に感慨深いです。

お寺の規模が地元のヒトに愛されているのか、観光客に愛されているのか、



んん??なんで??
でも、かわいい…。なぜか、石にマジックで、願い事が書いてあるんです。


ほかにも、「イタいところをなでると良くなる」というなで牛。


大量のお地蔵さま。
もはや、前列のお地蔵さまについては、風化によってただの石みたいになりつつある…。

そして、観光客もまばら…。
教科書レベルの重要文化財の宝庫なのに、あんまり流行ってないかんじと統一の欠けるこのかんじがたまらない六波羅蜜寺。

とにかく、大好きです。


さいごに、六波羅とは?

布施:見返りを求めない応分の施しをさせていただくこと。
   貪欲の気持ちを抑えて、完全な恵みを施すことで、布施行は物質だけではない。

持戒:道徳・法律は人が作り、現在はますます複雑になっている。
   私たちは高度な常識を持ち、瞬時瞬時に自らを戒めることが肝要である。

忍辱:いかなる辱めを受けても、耐え忍ぶことが出来れば、苦痛の多い現代社会におい    て、自らが他の存在に生かされていることがわかる。
   全ての人が心を我が心とする仏様の慈悲に通じることとなる。

精進:不断の努力のことをいう。
   我々、人の生命には限りがある。ひとときもムダにすることなく、日々誠心誠意を   尽くすことである。

禅定:冷静に第三者の立場で自分自身を見つめることをいう。

智慧:我々は本来仏様の智慧を頂戴しえ、この世に生を受けてる。
   しかし、むさぼりや怒り、愚痴によってその智慧を曇らせてしまいがちである。


ひとたびも南無阿弥陀仏といふ人のはちすの上にのぼらぬはなし 空也(拾遺抄)
 



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