浄瑠璃寺。

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京都と奈良の県境、京都府のお寺ではあるものの、地理的には圧倒的に奈良であろう浄瑠璃寺。
奈良駅からバスに揺られると、次第に住宅が少なくなり、青々とした景色が続く山間の道に入っていきます。



午後15時頃、浄瑠璃寺行きのバスの最終便は、ひとり旅であろう乗客が2名。
途中の停留所から、人が乗りこんでくることもなく、ただただ目的地に向かって、進むこと、1時間弱、豊かな山の集落に到着しました。





バスの運転手からは「もう奈良駅行の帰りのバスはないからねー」と、不安を煽るアドバイスを受け、ひとり旅の女性と私は慌てて、帰りの道順を確認…。
どうやら、加茂駅行きの最終便はまだあるらしいけど、かなり時間は限られるようなので、早足での見学になりそう…。

ここ、浄瑠璃寺は極楽浄土の世界を見事に表現していると言われる伽藍配置の浄土式庭園が有名な真言律宗のお寺。

池を中央にして、東岸を此岸(しがん)とし、過去世から送り出してくれる薬師如来を祀る三重塔、西側を彼岸(ひがん)とし、理想の未来にいて、すすんでくる衆生を受け入れ、迎えてくれる阿弥陀如来九体を安置する本堂があります。


夏の夕暮れ、西日が差し込む中央の池から眺める阿弥陀堂の風情ある佇まいは、ずっとここに居てしまいたくなるような、清々しさを感じます。


さて、ここ浄瑠璃寺の阿弥陀堂には、九体の阿弥陀仏さまがいらっしゃいます。
現世の行いから、どんな理想の未来へ導いてくれるのか。
これまでの努力や心がけなどの、色々な条件から、九品往生(くぼんおうじょう)。
下品下生から上品上生、下の下から、下の中、下の上から、最高の上の上まで、九つの段階の未来があり、それぞれに導いてくれる阿弥陀さまがいっらしゃいます。

この九本往生は、それぞれ印を持っており、仏さまの手の形を見ると判断できるのが、通例の九体阿弥陀さまですが、こちらの阿弥陀さまは、中尊のみ来迎印(下生印)、その他の八体は、すべて定印(上往印)を結んでおられます。

九体の阿弥陀さま。
よく見てみると、おひとりおひとりの表情や衣が少し異なっているのが、とても楽しい。
ひんやりしていた床の板の間も、夕暮れの西陽ですこし暖かく、夏の夕方の心地よさを感じました。


そして、なんといっても、可愛かったのがこの子。
野良猫同士の喧嘩に破れたのか、鼻や手足の傷が膿んでしまっているのが、とても可哀想で、たまりません。
でも、「痛い」なんて、一言も言わずに、穏やかな表情で近づいてくれるこの子が愛おしく、なんとも言えない気持ちになりました。


そして、対岸に見える薬師堂。
青々とした木々に囲まれて、ちょこんと頭を出す五重塔。
赤と緑の補色がうみだす、ハッキリとしたコントラストがまた夏らしい…。


限られた時間ではあるものの、穏やかで上品な仏像を楽しみ、四季の花木に触れ、
時間がゆっくりとまったような、極楽浄土の世界を十分に堪能しました。

若い頃、まったく興味を示さなかった自然美…。
むしろ、コンクリートの殺風景なちょっと冷たい雰囲気を好んできたわたしが、
この自然のあたたかみを心地よく感じ、思わずシャッターをきりまくる。






なんだか、この地に宿る仏さまのお導きが、わたしの体のなかにすーっと入っていく…。
わたし、ここが好き…。うん、すごく好きかも。
苦手な肥料の香りが鼻につくのだけれど、それでも好きって思う。不思議な感覚…。

ぼやぼやしてたら、終バスがなくなってしまうので、そろそろこのへんで。
絶対、また来よう。



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