東寺 五重塔。

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京の冬の旅。
普段は見学できない庭園、襖絵、仏像などの文化財が特別公開されています。
東寺では、毎年この時期になると、五重塔の初層(1階部分)が拝観できます。

京都駅から歩けるけれど、今回は近鉄に乗って、ひと駅。
東寺の駅から歩いて行くことにしました。
九条通りを出て、まっすぐ目の前に見えるのが、国宝・五重塔。


京都の象徴(シンボル)ともいえる、日本一高い五十塔。
世界遺産にも登録されている、真言宗の総本山「教王護国寺」。

794年、桓武天皇が京都に都を遷都され、メインストリートとして賑わった朱雀大路。
その東西に、国家鎮護の祈りを込められて建立された、唯一の官寺。
教王護国寺は、その東側に位置したことから、別名・東寺と呼ばれています。

元々は、国家のための寺院でしたが、のちに弘法大師さま(空海)に下賜され、
真言宗の総本山として、弟子である僧侶たちや京の人々によって守られ続けています。


東寺といえば、講堂の立体曼荼羅や金堂の薬師三尊など、みどころも満載ですが、
今回は、この時期しか拝観することのできない、国宝・五重塔が目的です。

この五重塔は、空海により、883年に竣工されました。
高さは55メートル。木造の建築物として、日本一の高さを誇っています。

この高さが故に、過去に四度の落雷による焼亡。
現在は五代目、江戸時代徳川家光によって寄進された塔です。



日本の仏教文化の象徴とも言える五重塔。
いったい、この塔は何の役割で建てられているのか、ご存知ですか?

これは、なんと「お墓」。
ブッタの遺骨を安置するストゥーパという塔が起源であるとされ、
ここ東寺には、空海が唐よち持ち帰った仏舎利が納められていると言われています。

いつもは外層だけしか拝観することのできない塔ですが、
今回は初層(1階部分)のみ拝観可能とうことなので、心躍らせながら、中へ…。

内部の中心には、太い心柱。
そのまわりを囲むのが、阿閦、宝生、阿弥陀、不空成就如来の金剛界四仏。
そして、更にそのまわりを囲む八代菩薩。

密教ならではの仏像が、心柱を取り囲んでいます。

密教で一番の仏さまと言えば、如来なのに唯一の宝冠と智拳印が特徴的な「大日如来」。
ですが...、その大日如来さまの仏像が見当たらない…。
位置関係からして、もしや…。

そうなんです、この仏さまたちに取り囲まれた心柱こそが、「大日如来」なのです。

日本最大の木造建築を支える心柱。
仏像ではなく、柱を「大日如来」さまに見立てることで、
この塔を支える心柱のお姿が、この世すべてを支えてくれる大日如来の慈悲として感じられます。

冬のこの時期しか開かれない塔の内部は、陽が当たらずに、ひんやりと適度な温度に保たれているので、鮮やかな極彩色がキレイに残っています。

柱はもちろんのこと、天井、壁の細部にまで施されている文様。
ひとつひとつ丁寧に描かれて、いかにこの塔が貴重で、大事に建立されたかが伝わってきます。

この壁面の絵画、よく見ると、密教の歴代の高祖が並んでいます。
もちろん、弘法大師さま(空海)も。

「この絵、観たことある...」

歴史の教科書で出てくる「空海」の肖像画。
まったくおんなじお顔をしたお大師さまがここにいらっしゃいました。

きっと、歴史を学び始めたばかりの小学生や中学生もハッと気づくのではないでしょうか?

密教美術の宝庫ともいえる五重塔。
けっして、広くはないこの空間に、ぎっしりと密教の神髄が詰まっています。


ひんやりとした五重塔から外に出ると、春のぽかぽか陽気。
春の訪れをいまかいまかと、ソメイヨシノが蕾を大きく膨らませて待っています。

そんななかで、ひと足先に訪れた「紅い」春。
東寺の境内を、美しく染め始めています。



真言密教の根本道場として、今も僧侶たちが修行をする「教王護国寺」。
ひとつひとつの建物の位置も、密教世界を顕していると言われています。

本を読んでみても、曼荼羅を見てみても、まったくもって理解ができていない密教の教え。

ただ、他の宗派とはまた異なる、なんだか分からないけど、ただならぬモノを感じます。



京の街の人々にも「弘法さん」と親しまれ、守られ続けている「東寺」。
世界の観光客が集まるのに、朝の通学、通勤路として利用されることも多い境内。
そして、時間になると、響き渡る鐘の音とお経の声。

地域のひとからすると、すごく身近なお寺なんだなーと思うと、
なんだか親近感が湧いてくるような、そんな不思議なお寺です。

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