不退寺。

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奈良の仏像宝庫と言えば、平城宮跡付近の「佐保・佐紀路」エリア。
東寺は、貴族や朝廷の官僚屋敷が立ち並ぶ高級住宅地で、都の北側を通っていた道を指すそうです。さて、このエリア、わたしが奈良の中でも特に好きなエリアのひとつでもあります。住宅地や小さな農道を通って、人影もまばら。ゆったりと奈良を感じながら、お散歩をしていると、こぢんまりとした寺院があり、そこにお邪魔すると、なんとも素朴で、また美しい仏さまに出逢えるのです。


大和西大寺駅から?または奈良駅から?バスに乗り、一条高校前のバスを降りて、いよいよ佐保・佐紀路トリップのスタート。まずは、木々が生い茂る静かな古寺「不退寺」。

平安の六歌仙で有名な在原業平のお寺です。
在原業平と言えば、伊勢物語の主人公と言われています。天皇の孫という非常に高貴な身分ながらも、政権争い?血筋の問題?により、臣籍降下して、在原の氏を名乗るようになりました。伊勢物語では、高貴な身分の女性たちとの禁忌な恋が語られ、「放縦不拘(物事に囚われず奔放である」」と描写されています。当時は容姿端麗と有名で、多くの女性と浮名を流していたことが、多くの和歌にも残されています。

“思ふには 忍ぶることぞ 負けにける 逢うにしかへば さもあらばあれ”
(キミを想う気持ちには、人目を忍ぼうという自制心が負けてしまった。キミと逢うことと引き換えにするのなら、どうなろうと構わない。)


す、、すごいな…。
なんだか束縛心を感じてしまいますが、「こんなに想われているー」と思うと、当時の女性たちも胸が高ぶったものでしょう。ましてや、容姿端麗のイケメン。昔からイケメンはナルシスト傾向が強いのでしょうか…笑。多くの女性との浮名…ですから、みんなに同じようなこと言ってたのね。とちょっと思ってしまうわたしです。イケメンだからってーー。


さて、そんな在原業平公の残した仏像は、果たしてどんなお姿なのか…気になります。
拝観料を払うと、こちらの従業員!?のおじさんが、丁寧に本堂へご案内をしてくれました。
こちらの本堂、中の柱などに色彩が残っており、朱の鮮やかさと共に、さまざまな文様。
今となっては、風情溢れる静かな古寺ですが、当時はとても豪華であったことが想像出来ます。

さて、いよいよ、リボン観音とも言われる「聖観音」さまとのご対面です。

在原業平作のリボンをつけた観音さま@不退寺

なんと、豊満でとてもセクシーな聖観音さま。
それでいて、耳の横の左右のリボンがとても可愛らしい…。
さすが、多くの女性との恋をご経験されてきた業平さま。なんとも素晴らしい美仏です。

でも、一番に驚いたのは、この彩色。
平安初期に作られたにも関わらず、退色せずに残っていることがすごい。実はこの仏さま、永い間御厨子のなかで、保管されていたそうで、戦後にご開帳されるようになったとか!?(ちょっと記憶が定かではないので、次回にまたキチンと聞いてまいります。)
そして、この美しい白の着色は、貝の粉を利用しており、ところどころに残る極彩色は顔料が使用されているとのことです。顔料は粒子が大きいので、不溶の性質を持っているので、なかなか溶けにくいのですが、それにしても、よく残っています。
自然の生み出す色のバリエーションと、このしっかりした着色に驚きました。

そして聖観音さまを囲む五大明王さまも、実に素晴らしいです。
魚眼が美しく、また足もとに残る極彩色。小さくこじんまりとした古寺ながらも、仏像のクオリティーは圧巻です。



そして、この不退寺のもうひとつの大きな特徴が境内の花々。
「南都花の古寺」とも言われており、四季折々の花々が楽しめることでも有名です。
椿、レンギョウ、カキツバタ、睡蓮、さざんか...。



ちょうど夏には小さな石壷!?のなかに、紫の睡蓮が花を咲かせていました。
とても麗しくて、心が浄められるようです。


こちらは、夏の多宝塔。
青々とした木々と蝉の声が、夏の力強さを感じます。


そして、初秋の多宝塔。
11月初旬、紅葉にはすこし時期が早かったようですが、やはり夏とは異なる表情。
木々の色が、緑から黄色に変わり始め、夏に比べると随分優しい印象になりました。

四季によって、まったく異なる表情で迎えてくれる不退寺。
何度来ても楽しめるところは、とても大きな魅力です。


あら、可愛い。
ちょっと無愛想ではありますが、なんとも憎めない、このかんじ。
かっこつけてるけど、「しっぽ、足に巻き付けちゃって!笑」

業平公のおはなし、仏像、境内、ねこちゃん。
本当に小さなお寺ですが、すべてが充実して、ずっと居ても飽きない素敵なお寺です。

ちはやぶる 神代もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは @在原業平

神々が住み、不思議なことが当たり前のように起こっていた、いにしえの神代でさえも、こんな不思議で美しいことは起きなかったに違いない。奈良の竜田川の流れが、舞い落ちた紅葉を乗せて、鮮やかな唐紅の絞り染めになっているなんて。@小倉百人一首

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